転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


68 僕の魔法ってどれくらい強い?



 みんなが落ち着いたと言う事で、話はやっと狩りの話題に。
 さっきお父さんが一角ウサギとビッグピジョンのどっちを狩ろうかって話をしてたけど、

「ルディーン君がブレードスワローを狩ったという方法が見てみたい」

 って言う、クラウスさんのこの一言でビッグピジョンを狩る事になったんだ。

 と言う訳でみんなして木にとまっている魔物の反応がある場所へゆっくりと移動。
 急いで行くと気づかれて逃げられちゃうかもしれないもんね。

 で、その移動の時間を利用して、クラウスさんがお父さんに僕の魔法について質問してきたんだ。

「なぁハンス、それでルディーン君はどれくらいの距離から狙えるんだ?」

「そうだなぁ。ルディーン、イーノックカウの森での時は確か30メートルくらいの場所からだったよな?」

「うん。それくらいなら、ちゃんとねらったところに当てられるよ」

「30メートルか、凄いな」

 このクラウスさんの言葉を聞いて、お父さんが変な顔をする。
 だからどうしたの? って聞いてみたら、

「いや、シーラが射れば普段の狩りで使っている短弓でももうちょっと飛ぶから、何故クラウスが30メートルと聞いて凄いと言ったのか解らなかったんだ」

 こんな答えが帰って来たんだ。
 そっか、確かに弓のほうが遠くまで届くのなら別に魔法がそれくらいの離れてる所に届いてもびっくりするはずないもんね。
 ところがぼくたちの会話を横で聞いていたお母さんが、そんなお父さんに向かって呆れ顔でこう言ったんだ。

「何言ってるのよ、ハンス。ルディーンは30メートル先の”狙ったところ”に当てられるって言ってるのよ。弓の場合は足場がしっかりしていて、なおかつ風が吹いていないなんて好条件がそろわない限り、30メートル先の狙ったところに当てるなんて事ができるはずないでしょ」

「そうよね。それに、仮に当てられるとしても木にとまっている魔物をそんな遠くから弓を射ったって、弦を弾く音や矢の風切り音で気付かれて避けられてしまうのがオチだわ。それなのにルディーン君の魔法は当てられるんでしょ? ならそれは本当に凄い事よ」

 そしてそのお母さんの言葉を受けて、エリサさんもこう言ってくれたんだ。
 そっか、ならやっぱり魔法って凄いんだなぁ。
 あっ、でも。

「でもまほうって、とおくでうってもちかくでうってもつよさは変わんないんだ。弓はちかくでうった方がつよいんだよね?」

「それはそうよ。飛んで行く物である以上、距離が離れれば威力は減って行くからね。って、ああそうか。ルディーンは自分の魔法だけじゃなく、お母さんたちの弓も凄いって言いたいのね?」

「うん。ぼくのまほうはとおくにでも当てられるけど、お母さんの弓はちかくならつよいまものもたおせるから、どっちもすごいよね」

「ふふふ、ありがとう。ルディーン」

 いくら魔法が凄いって言っても僕はまだ3レベルなんだし、威力で言えばお母さんの弓よりかなり弱いんだよね。
 だから当てられるってのは凄いのかもしれないけど、僕はやっぱりお母さんたちの弓の方がもっとず〜っと凄いって思うんだ。

「そうだな。確かにルディーンの魔法は遠くまで届くが、イーノックカウで見た感じからすると威力的にはまだまだだった。強い魔物相手ではたとえ急所に当たったとしても、シーラの弓のように一撃でしとめる事は多分無理だろうな」

「そう。魔法と言っても万能じゃないのね」

 うん、やっぱりそうなんだね。
 お父さんたちのパーティーはブラウンボアみたいな強い魔物も狩るんだし、そんなの相手だったら僕の魔法なんてきっとあまり役に立たないって思うんだよね。
 それだけに強い魔物にも通用するって思われたら困るから、お父さんにこう言って貰えて僕はちょっとだけホッとしたんだ。
 

 そうこうしているうちに獲物である大きな茶色い鳥の魔物が見えてきたから一度止まって、そこからは更に音を立てないよう警戒しながら近づいて行く。
 そして。

「ルディーン、行けるか?」

「うん。<マジックミサイル>」

 魔法の射程距離に入ったと言う事で、お父さんの指示でマジックミサイルを発動。
 すると細い光の杭が吸い込まれるように頭に命中し、鳥の魔物はグラリと傾くとそのまま木の下へと落ちて行った。

「よし、仕留めたな。皆は一応ここで待機。クラウス、確認に行くぞ」

「おう」

 お父さんとクラウスさんは僕たちを残して先ほどの鳥の魔物のところへ。
 これはクラウスさんからもし魔物にまだ息があった場合、小さな僕が不用意に近づくと危険だから今日は一日こうするってさっき決められたんだよね。

 と言う訳でその場でお母さんたちと待っていると、お父さんとクラウスさんは鳥の魔物を持って僕たちの所まで帰って来た。
 魔物には頭にしか傷がない所を見ると、僕の魔法でちゃんと倒せたみたいだね。
 よかった。

 これでこの森でも弱い魔物なら僕の魔法でも急所に当てれば倒せるって事が解ったから、移動して今度は一角ウサギを狙う事に。
 で、居る場所は探知魔法で解っているって事で、そこに移動してビッグピジョンの時同様こっそり近づき、今回も遠くから魔法を頭に当てて倒したんだ。


「なるほど、このレベルの獲物なら問題なく倒せるってわけか。ところでハンス、ルディーン君の魔法はどれくらいの魔物にまで通用すると思う?」

「そうだなぁ、イーノックカウの森ではジャイアントラッドの胴体を貫通してたから、ある程度までは通用するだろうが……」

 するとお父さんとクラウスさんは僕の魔法がどれくらいの威力なのかが気になったみたいで、こんな事を話し始めたんだよね。
 前に見た感じからある程度の威力は解ってるみたいな事をお父さんは言ったんだけど、でも実際に試したわけじゃないからはっきりとは言えないみたい。

 で、そんなお父さんを見て、お母さんがそれならこうしたら? って言い出したんだ。

「そんなの実際にどれくらいの魔物にまで通用するのか、やってみればいいだけじゃないの。と言うより、安全な狩りができる今日調べるべきね」

「そうよねぇ。私たち以外とルディーン君が一緒に行動してる時に強い魔物と出会ったとして、その時になって初めて通用しないって解ったら彼の命が危なくなるもの。フォローできる私たちが居る今日の内に調べておくべきだわ」

 お母さんの意見にエリサさんも賛同し、そしてその意見に説得力があったからなのかお父さんたちにからも反対意見が出なかったと言う事で、そこからは徐々に強い魔物を相手にする事になったんだ。


 とは言っても一角ウサギと対して変わらない魔物を相手にしても仕方がないって事で、もう少し強い相手を求めて森の奥へと分け入る事に。
 途中毒があるって言う蛇の魔物とかに遭遇したけど、強さ自体はそんなにでもなかったし、そこに居るって探知魔法で予め解っていたから僕が魔法を撃つまでも無くお母さんが弓で倒しちゃったんだよね。

「ほら、お母さんもちゃんと強いって所をルディーンに見せたかったし」

 なんて言いながら笑ってたけど、こっちに気が付いて向かってくる胴体の直径10センチちょっと、体長2メートル以上の大蛇の頭を一発で射抜いた姿を見た僕は、お母さんも流石村一番のパーティーの一員だけの事はあるなぁって思ったんだ。
 だって、口を開けて迫ってくる大蛇の魔物、大迫力だったもん。
 なのに平気な顔をして弓を構えて打ち抜いたんだから、凄いよね。


 さて、ある程度森の中に入ってからはいろんな魔物を狩った。
 そこには大きな蟷螂やカナブンのような虫の魔物とか、狐や狸のような本来は小さな動物が変異した魔物、それにこの森にはあまり居ないって言う狼のような肉食の魔物まで居たんだけど、僕はマジックミサイルでその全ての魔物を一撃で倒すことができたんだ。
 でもその全部が僕の手柄なんじゃなくって、お父さんやクラウスさんがあの獲物はどの方向から近づけばいいかとか、これをしたら気付かれるからやらないようにとかを教えてくれたからなんだよね。
 多分お父さんたちがいなかったら気付かれて逃げられたり、そうじゃなかったとしても急所を打ち抜けなくて危ない目にあってたりしたと思うんだ。
 だから僕が強いから全部狩れたんだなんて、絶対思っちゃダメだよね。


「取り合えず成人前の子供が狩れる範囲の魔物なら、急所に当てさえすれば倒せることが解ったわけだが……どうだルディーン、ここは一つブラックボアもやってみるか?」

 こうして一通り倒して回ったころ、お父さんがいきなりこんな事を言い出したんだよね。


 ブラックボアと言うのは普通より一回り大きくはなっているものの体の色はまだ黒に近い茶色の猪が変異した魔物で、うちの村ではこれを狩ることが出来れば一人前のパーティーを名乗れるようになるって言われているんだ。
 因みにこのブラックボアがもっと魔力溜りの影響を受け続けると体がもっと大きくなり、毛も茶色になってブラウンボアって言われるとっても強い魔物になるんだ。


「え〜、ブラックボアはむりだよ。お兄ちゃんたちでもまだたたかったこと、ないんでしょ?」

 お父さんが調子に乗ってそんな事言い出したけど僕の魔法で倒せるなんて思えないし、危ないんじゃないかなぁって思うんだ。
 でも他のみんなは違う意見だったらしくて、やってみた方がいいって言うんだよね。

「さっきも言ったけど、どれくらい通用するかを一度試してみるべきだとお母さんも思うわよ。いずれは戦わないといけない魔物なんだから」

「そうね。私たちと一緒なら安全なんだし、ルディーン君、やってみたら?」

 お母さんとエリサさんはそう言うし、クラウスさんも横で頷いてる。
 結局反対したのはブラックボアと戦った事がない僕だけだったという事で、それならお父さんやお母さん、それにクラウスさんたちを信じて挑んで見ることになったんだ。
 だから探知魔法でブラックボアらしき魔物を探して挑戦開始。
 で、結果はと言うと、

「やっぱり通用しなかったね」

 そう、僕のマジックミサイルが頭に見事に命中してブラックボアは大きくよろめきはしたんだけど、その後体勢を立て直して魔法を撃った僕の方へと突進! その勢いと迫力にびっくりした僕はまったく動けなかったんだけど、でもそんなブラックボアもお母さんが僕を抱えて避けている間にお父さんたちがあっさり倒しちゃったんだよね。

 と言う訳で僕は殆ど役に立てなかったんだけど、でも初めてのブラックボア討伐に大興奮。
 お母さんに下ろされた時には、喜びすぎてよろめいて転んじゃったくらいなんだ。

 おまけに足元もちょっとふらついて、すぐにはうまく立ち上がれなかったもんだから、

「ルディーン。嬉しいのは解ったからちょっと落ち着きなさい」

 そうお母さんに怒られちゃったんだよね。
 だから僕は座ったまま大きく深呼吸、そしてどきどきする胸がある程度収まるまで待って、やっと起き上がったんだ。

 でも、なんかまだちょっとふらふらする。
 喜びすぎて、どこかおかしくなっちゃったのかなぁ?


「さて。大物も狩れた事だし、今日はこれくらいにしておくか?」

 僕がちょっとふらふらしながらもやっとの事で起き上がると、クラウスさんがこんな事を言い出したんだよね。
 でも、折角森に来たんだし、僕としてはもうちょっと狩りがしたい。
 と言う訳で近くに僕が狩れそうな魔物がいたらそれを狩ろうよって言うつもりで周りを探知したんだけど、そしたらなんと物凄く強い魔物の反応が帰って来ちゃったんだ。

「えっ!? これってもしかして」

「ん? どうしたんだ、ルディーン」

 強い気配に驚いてつい出してしまった声にお父さんが反応してこう聞いてきたから、僕は教えてあげたんだ。
 近くに物凄く強い魔物が、ブラウンボアが居るよって。


 ボッチプレイヤーの冒険が完結したら、この作品は別の場所に投稿を開始します。
 その時は衝動のページとしてのリンクを外しますから、それまでにこのページに直接リンクするか、衝動の部屋の上、リンクの部屋の説明文にある最後の。をこの衝動の部屋トップページにリンクさせているので、以降はそのどちらかでアクセスしてください。
 リンクを切ってからもなるべく今と同じペースでこのHPに最新話をアップするので。


69へ

衝動のページへ戻る